遺言書作成
遺言書作成の必要性
「遺言書は大金持ちが書くものだから、我が家には関係ない」とお考えになる方が大半です。
しかし、令和2年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産を巡る争いでは、遺産額1,000万円以下が34.7%、1,000万円を超えて5,000万円以下が42.9%で、約80%が遺産が5,000万円以下の普通の家庭で起きています。
そして、遺産争いを防止するためには、遺言書の作成が効果的です。皆さんも年齢や財産の多少を問わず、“相続”を“争族”にしないために遺言書の作成を検討なされてはいかがでしょうか。
遺言書でできること
遺言書でできることは、大きく分けて「相続に関する事項」、「身分に関する事項」、「財産に関する事項」に分けられます。その他、法的に効力を発生させる事項ではありませんが、「付言事項」として家族へのメッセージを添えることができます(例えば、「私は○○という良き妻と2人の子供たちに囲まれて、幸せな人生を送ることが出来たことに心から感謝しています」)。
相続に関する事項 |
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身分に関する事項 |
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財産に関する事項 |
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遺言書の作成が特に必要なケース
相続争い防止
被相続人が遺言書を残さずに死亡した場合、遺産を分けるためには相続人全員の合意による遺産分割協議が必要となります。
しかし、相続人同士が不仲だったり、疎遠だったりすると、その遺産分割協議がまとまらずトラブルが発生する可能性があります。
次のような場合には特に注意が必要です。
ご家族や大切な方を無用な相続争いから守るために遺言書の作成をお勧めします。
- 1ご夫婦に子供がいないケース
- 相続人は、配偶者と亡くなられた方の親(親が死亡している場合は兄弟姉妹)になります。遺産の全部を配偶者に相続させたいときには、遺言書の作成が必要です。
- 2面倒をよく見てくれた子供に財産を多く残したいケース
- 遺言書がないと法定相続分に従うことになり、それぞれの子供の相続分は平等になります。子供の間で分け方に差異を付ける場合には、遺言書の作成が必要です。
- 3再婚をし、現在と前の配偶者との間に子供がいるケース
- 相続人は現在の配偶者と子供全員です(前の配偶者は相続人ではありません)。双方が感情的になりやすく、遺産争いが起きる可能性が高いので、遺言書できちんと意思を残しておく必要があります。
- 4正式に結婚はしていないが、内縁の配偶者がいるケース
- 内縁の妻には、内縁の夫の遺産についての相続権はありません。内縁の妻に財産を残したいのであれば、遺産を送る旨を記載した遺言書の作成が必要です。
- 5婚外子がいるケース
- 正式な婚姻関係にない相手との間に子供がいて認知したいが、生前はためらわれる場合、遺言書によって認知を行うことができます。
- 6相続人が誰もいないケース
- 特別の事情がない限り、遺産は国庫に帰属します。それを望まない場合には、例えば、「お世話になった友人に遺贈する」とか、「福祉団体に寄付する」等といった遺言書を残し、その意思を明らかにしておく必要があります。
- 7会社や事業を行っているケース
- 会社を経営なされている方や個人事業主の方は、後継者に自社の株式や事業用の財産を引き継がされる場合には遺言書でその意思を残しておく必要があります。遺言書がないと、相続によって資産が分散してしまい、経営が成り立たなくなる恐れがあります。
遺言書の種類
一般的に利用される遺言書には、遺言者本人による手書きで作成する「自筆証書遺言」と公証人に作成してもらう「公正証書遺言」の2種類があります。どちらとも法律上の効果は同じですが、作成のプロセスや作成後の手続きが異なります。
それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、ご自身にあった形式の遺言書を選択することが大切です。
また、令和2年7月10日より、自筆証書遺言書を法務局で預かってもらえる「自筆証書遺言保管制度」がスタートしました。「自筆証書遺言」が向いている方は、こちらの制度もご検討ください。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
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作成方法 | 本人が全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自書し、押印して作成する | 本人と証人2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述する |
証人の有無 | 不要 | 2人必要 |
手続費用 | かからない | かかる |
保管方法 | 遺言者が保管する | 公証役場で保管する |
検認の有無 | 必要 | 不要 |
メリット | 誰にも内容を知られずに作成することができる | 要件不備で無効になることがない |
デメリット |
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法務局における自筆証書遺言保管制度(令和2年7月10日スタート)
自筆証書遺言は、自宅で保管されることが多く、相続人に発見されなかったり、紛失や改ざんのリスクがあります。
そこで、ご自身で作成した遺言書を法務局に持参し、遺言保管官という法律のプロがチェックしたうえで、その遺言書の原本を法務局で保管してもらう制度(自筆証書遺言保管制度)が新設されました。これによって次のような自筆証書遺言の欠点を補う事ができます。
自筆証書遺言保管制度のメリット
- 遺言保管官が遺言書の様式をチェックするので、遺言が形式的に無効となることはない(内容のチェックはしてもらえません)。
- 法務局で遺言書が保管されるので、遺言書を紛失したり、相続人が遺言書を発見できないといった事態を避けられる。
- 法務局に遺言書が保管されるので、遺言書が改ざん等されるリスクを避けられる。
- 家庭裁判所での検認手続きが不要です。
遺言執行
遺言者が亡くなった後、実際に遺言書に記載された内容を実現する必要があり、その手続きをする者を遺言執行者といいます。遺言執行者は、遺言で指定することができます。法律上の業務として遺言執行者になることができるのは弁護士と司法書士だけです。
遺言執行者を指定することは相続人同士の衝突を避けるためにも非常に重要なことです。
そして、遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をおこなう権限を持っています。
できる具体的な行為
1相続財産目録の作成
2不動産、株式、自動車等の名義変更
3預貯金の解約・払い戻し
4推定相続人の廃除及びその取消
5子の認知
6その他、遺言執行に必要となる一切の行為
板橋リーガルオフィスでは、新たに遺言書を作成する場合、相続開始後に遺言執行者が指定されていない遺言書が見つかった場合に、遺言執行者の就任をお引き受けし、遺言執行をサポートします。